愛情はお金で買えるのか 「マルクスの資本論」から読み解く商品とお金の真実

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参考文献:
「池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」」池上彰 ホーム社

「資本論」を知れば、「愛情はお金で買えるのか」が理解できます。

資本論とは

資本論は、ドイツのカール・マルクスが書いた本で、Das Kapitalという名で1867年にドイツで発行されました。

初版は1000部でしたが、売れるまで相当の月日を要したそうです。
その後、フランス語版、英語版と発行され、日本では400万部売れたと言われています。

マルクスの「資本論」は、資本主義がいかに非人間的なものであるかを分析した、経済学の本です。

どのように資本主義を分析したのか

資本主義経済の下では、すべてのものが商品になっている。そのため、一つ一つの商品を分析すれば、資本主義の全体像が見えてくる、と言っています。

愛情はお金で買えるのか

あるエピソード

ある素敵な男性がいました。そして彼にデートに誘われました。

なんと驚いたことに、私とのデートのために彼はディズニーリゾートを貸し切ってくれました。

「君のためにディズニーリゾートを貸し切ったよ。一晩、すべては君のためだよ。」と彼は言いました。

「私のためにここまでしてくれて、彼の愛情がとても伝わるわ。」と彼女は思い、
徐々に彼のことが好きになります。そして2人は付き合います。

このように、彼は彼女の為に一生懸命に愛情を表現しました。
そして彼女にも彼の愛情が伝わったことにより彼を好きになりました。

彼はお金があるからこのような愛情表現ができました。しかし、結果的に彼は彼女の愛を獲得することができました。

果たしてこれは愛情なのでしょうか、ということです。

今のエピソードから言えば、結果的にお金で愛情を買えたとも言えますし、彼の愛情表現が良かったから彼女の愛を手に入れたとも言えます。

かつて、
「お金で買えないものはない。愛情もお金で買える。」と言った人がいました。

これを聞いた時に、腹が立った人もいるでしょう。
しかし、今のエピソードを踏まえると、あながち間違いではないということも理解できると思います。

マルクスの資本論における論理

「なぜ商品なのか。」を見ていく、これがマルクスの資本論の論理立てです。

商品には2つの価値があると言っています。

①使用価値:使って何かの役に立つこと

非常に安いシャツもあれば、ブランド物の商品もある。
シャツは着ることができるだけで使用価値があります。

なぜブランド物のシャツは値段が高いのか。

そこにはブランド価値というものが付け加わっているからです。

その価値には、着心地がよかったり、シワにならなかったり、あるいは、さりげなく胸元にブランドマークが入っていて、
「あ、この人はいいブランドのシャツを着ているんだな」というように、自らの価値を上げてくれる、そのような使用価値があります。

②交換価値:他の物と交換できるということ

物同士を交換する物々交換もあれば、お金と交換できる換金もあります。

お金の歴史については、
「仮想通貨この先避けては通れない!仮想通貨の歴史・知識・教養」で紹介しています。

物(商品)をお金に交換できる、すなわち物からお金を得ることがてきる。

これがお金を稼ぐという本質です。

そうなると、商品を沢山作ればお金も大量に稼げるという考えが生まれ、実行したのが資本家です。

それに付随する形で商品を作るために働く労働者が誕生します。

やがて資本家が富を独占し、労働者はまるで奴隷である、という縮図が出来上がります。

このことにマルクスは気づき、資本論の中で批判しているのです。

マルクスを援助していたエンゲルス

マルクスの資本論を評価し、出版までの援助をしたのがエンゲルスです。

エンゲルスは父の工場を引継ぎ経営者となった後も、いかに資本主義がひどいものなのかを、経営者目線でマルクスに情報提供していたそうです。

ちなみに、「資本論」は全3部作ですが、2部3部はマルクスが亡くなった後、マルクスの残した原稿を元にエンゲルスが仕上げたそうです。

資本主義の審判の日

マルクスは資本主義はいずれ終わりを告げると言っています。

資本主義における労働者の中から、突出した能力のある者が現れ、彼らがリーダーシップをとり、組織的な抵抗運動を行い、やがて資本家達を滅ぼすと言っています。

これが、歴史上の社会主義革命です。

ソビエト社会主義共和国連邦の失敗と真実

社会主義革命の流れで、社会主義運動や共産主義運動が広がっていき、次々と社会主義国家が誕生しました。

まず初めに創られた国が、ソビエト社会主義共和国連邦です。
リーダーはレーニン(初代最高指導者)です。

ソビエト崩壊時のレーニン像が引き倒される映像はよく見ますが、実はロシア各地にレーニン像は今でも沢山残っています。

そして、現地の人々は「レーニンの時代は良かった」と言っているそうです。

しかし、指導者がスターリンに変わってから、徹底的な言論統制の社会に変わっていきます。

農業の失敗

スターリンは全ての農地を国有化し、農民を平等な労働者にしようとします。

貧富の差が生まれない、労働者のための社会創りを目指します。

しかし、理想と現実が浮き彫りになります。
農業は天候に左右されるものです。

自分が所有している農地であれば、台風が来るとわかれば、夜中であろうと台風対策を行うでしょう。

しかし、国有の農地で自分に関係ないとなれば、みんな時間外勤務は行わなくなります。

さらに、スターリンは農地を国有化する際に、大農地を持っている人達をみんな処刑しました。

それにより、十分な技術や知識が無い人たちが農業をやることになります。

それにより、生産性が急激に落ちていきます。

生活必需品生産の失敗

資本主義では各企業が激しい競争の中で、商品を売っていきます。

それにより、失敗した企業の商品は廃棄され、これが資源の無駄遣いだとマルクスは言っています。

ソ連はこのことを受け、経済学者を集結し、5ヶ年計画などの生産計画を打ち出し、必要な分だけ生産するという生産計画を立てました。

しかし、冬に使うブーツ一つとっても、デザインが長靴のようなものであったり、男性目線、女性目線、年齢層など多種多様なニーズに応えることが出来ず、結果的に大量に売れ残ってしまいます。

まとめ

資本主義はとても冷酷かつ非人間的である。

社会主義は非生産性、国民の貧困を招くものである。

しかしながら、
現在再び、マルクスの資本論が注目されています。

それは、リーマンショック後、フランスの経済学者ピケティが出版した「21世紀の資本」が世界的ベストセラーとなったためです。

今後の経済はどのように動いて行くのか、
楽しみです。

おわり。

参考文献